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第29号テーマ:その気になれば。
半年ぶりで古くからの友人にあった。この友人は今期の決算で過去最高の利益を上げていた。会って一杯やりながらその快挙の話を聞かしてもらった。とてもいい話であったので紹介します。 友人の会社は不況業種と言われる専門工事業(左官業)ですが、いま不況業種といったらどんな業種も入ってしまいそうですが、専門工事業は特に公共工事の激減、大型建設工事の減少から大幅な受注量の減少と受注競争からくる受注単価の下落と行先の暗い状況にあったようです。2年ほど前に経営が瀕死の状態に陥ったのです。大幅な赤字が2年続き資金繰りの悪化でダメかと倒産の覚悟を決めたらしい。 左官工事業という性格から元請であるゼネコンからの下請けです。受注単価は前年の15%の下落、工事量も前年対比10%の落ち込みです。幾らコストの削減を図っても対応しきれない。早朝から夕方遅くまで額に汗して働いても利益がでないのです。一番の困った問題は社員の意識の低下でした。 仕事をしても利益が出ないのですから仕事が一層苦しくなり、社員の意識は低下するばかりであったようす。時には仕事確保のために赤字覚悟の仕事を取る事もありました。赤字、資金繰りの悪化、銀行の貸し渋りの状況の中で会社は瀕死の状態になっていったのです。その瀕死の状態から社長が一念奮起し、一年で見事に最高益を出したのです。 その手法は、社長の決意と覚悟と率先垂範の経営姿勢でした。 1) 社長自らが工事現場に入り率先して働いた。午前7時から現場に入り働いたのです。真夏の炎天下だろうが真冬の寒風中だろうが、社長が現場に入る事により現場の空気が変わったのです。 それまでは社長は現場に来ても社員の仕事振り見て帰るだけだったので、社員も社長が現場へ来ると何もしないで口だけうるさいと、社長が現場に来るのを嫌っていたようです。 それが社長自らが現場に入り率先して仕事をしているのですから、社員は緊張もするし活気も出た。これが仕事の生産性を飛躍的に向上させた。社員にとっても大きな喜びになり、今ではどこの現場からも社長に来てくれと引っ張りだこのようである。当然社長への尊敬の念が高まったのと言うまでもありません。 社長が社員30人の先頭に立って率先垂範したのでした。 2) 社員に我慢を強いた。 それまでの早出残業手当を廃止し、利益が出たら皆で分配する事にしたのです。 残業手当をなくして業績評価で月々の手当てを決めるようにしたのである。一件一件の工事で確実利益の出るように徹底した原価管理を行い、それででた利益を社員に還元する。今まで支払っていた残業手当がないのですから、時間外に働いたのは全て利益になった。 社員の士気も向上したのは言うまでもない。朝6時半から夜8時間での作業は真夏ともなると日中の気温が40度にもなり、強靭な肉体も立っていられなくなった事もあったとか。 3) 銀行への借入金返済を一年間元金を棚上げし、金利のみとして銀行の貸し渋りと赤字から来るキャッシュフローの悪化に対応した。 経営の要であるキャッシュフローの改善は、経営者にとって一番厳しいが、やらねばならない仕事事ある。 これを真剣にやらねば経営は破綻する。銀行への元金棚上げは一つ間違えば信用を失墜し命取りであるが、上手くいけば瀕死の会社でも自力再生できる。経営者の厳しい決断を要する事である。この棚上げも順調に行きキャッシュフローは改善され、一年で元に戻すことができ、銀行の信頼を回復したのです。 今では銀行が驚くほど経営体質、財務体質が立派になったとの事である。どんなピンチに立っても、八方塞がりでも天の一方の道は開けている事に活路見出したのである。 4) 社員全員が営業マンに徹したとう事も大きな成果であったようである。 それまでの営業は社長一人であった。長年の取り引きで信頼関係も築かれていたので社長一人の営業でも充分であったようですが、ご多分にもれず公共工事の減少が、彼の会社の受注量にも大き影響した。それが受注競争、単価競争となり経営に大きな打撃を与え、赤字転落させたのでした。 これを乗り切るためには、一現場一現場良い仕事をし、元請会社に認めてもらう事であるとの社長の号令の下、本当に社員一丸となり良い仕事をしたのである。仕事内容は勿論であるが、現場の挨拶、返事、安全管理、後片付け整った服装と徹底した。勿論茶髪などは論外である。 この事は巡回のゼネコンの現場監督が見過ごすことはありませんし評判にもなった。さらに社員は「次の現場がありましたら見積もりさせて下さい。」という営業をするのである。現場作業員の社員にはなかなか勇気のいることであったが、見事に成功したのである。 一番の営業は良い仕事をしお客様(ゼネコン)に評価をして頂いた事である。もちろん現場という危険な場所での規律正しい挨拶や返事、後片付けの励行は安全管理の上からもお客様の高い信頼を得た事は言うまでもありません。これが最大の営業力となりそれまでの価格競争から脱し高い利益性になったのです。 多くの経営者は、長く続く不況という経済環境にもなれてきて現在の経済環境が当たり前の経営環境であり普通の景気の状態と考えられるようになって来ましたが、故に、経営者自身この時代に適応する経営観や経営のあり方を再考に再考を重ねるべきです。 松下幸之助氏の語録に「経営は手品ではない」という言葉がありますが、経営は奇策もなければ一発逆転もないし、寝て待つ果報でもないのです。あるのは経営者の引くに引けない決意であり、必ずやり遂げるという姿勢だけであると思うのです。どんな状況においても「社長がその気になれば、」企業は生きられると思います。 友人は「神風」や「寝て待つ果報」の様な神頼みや、奇策での一発逆転に期待したのではなかった。社長自らが「その気になって。」社員と共に戦う事を共有したのでした。 久しぶりに友人に会って深く感激したと同時に良い話を聞かせていただいた。商売(事業)に行き詰まりはないとはこの事でなのでしょう。あるのは自らの心にある行き詰まりだけである、という事でしょうか。 |
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