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第36号テーマ:愚公移山
「愚公移山」 「愚公移山」の話は余りにも有名であります。この話は「ものごとは粘り強くやれば、きっと目的は達成される。努力はどんな難事業でも成し遂げる事ができる。」という事を言う時に使われ、「小利口な者より愚直な者の方が大きな仕事を成し遂げる事ができる。」ことを意味する中国の故事成語です。 中国には故事成語は何千年も前からありその数も膨大なものです。我々が日常よく使う諺の多くは中国の故事成語からなっているものが多くあります。この「愚公移山」も何時の時代のものかはっきりしないと言う事ですが、「列子」の湯間篇に書かれているということですから、紀元前4世紀以降に書かれたたものと思われます。 「列子」は春秋時代の(紀元前700年〜220年)の人で老子と荘子の中間ぐらいの頃の人と言われます。その列子が書かれた「愚公山を移す」は現代の我々に目標をもって努力する事の大切さや、志はその人の人生の全てを決めてしまう事を言っています。「愚公移山」の話の概要は次のような内容の話です。 昔、中国に大行山と王屋山という二つの高山があり、人々は村に出入りにするのに遠回りをしなければならなかった。北山の愚公という老人は90歳になろうといていましたがこの二つの山を取り除き平らにし、遠回りをしなくても良いようにしようと考えたのです。隣近所の多くの人は愚公を馬鹿にし、阜?ォは賛成し陰では陰口を叩きながら笑っていた。 中でも一番の反対者は奥さんであったのです。「これまで小さな山も崩せなかった人がどうして大行山や王屋山を崩して平らにできようか」と疑い、反対したのでした。また崩した山の土を捨てるのに海まで持っていかなければならず、これをもっていくだけで片道1年もかかるのです。それを見ていた知旻は「90歳にもなって老い先短いのに、山の端くれも崩せないだろう・・・」と言ったのでしたが、愚公はそれに嘆息して言ったのです。「貴方こそ愚かな心の持ち主でだ。お前さんのように決まった事しか考えられない人には分かるまい。わしが死んでも子供がいる。子供は孫を産む。その孫はまた子を産む。次々と子供を産んでいく。子孫は尽きる事はないが、山は今以上には大きくならないし増えないのだ。」と。 これを聞いた天帝は愚公の一途な心に感心し、二つの山を神に背負わせて平らにしたと言う話です。 2400年以上前の話ですが現代でも良く「愚公のような人だ」とか「愚公人」等といわれ、今でも新鮮な言葉として聞く事ができます。 この話は、人間は知識があるとかないとかではなく、自分の行う事を一途に信じて実行する事でどんな困難、苦難と思われるような事でも、やがて実ると言う事を教えてくれています。気の遠くなるような大事業でも、千丈の堤の堰堤のような障壁も「愚公移山」の志をもってやれば、やがて天が味方しそれを乗り越え実現する事ができるということです。 愚公のような遠大な計画は、一見実現しそうにない目標ですし、当然のごとくそんな計画や目標は達成できるわけがないと、他人から批判されたり一笑されたりして相手にされないものです。 私の友人に会社を創業したとき上場すると言ったら、周囲から「大言壮語」と笑われたり、小さい会社が生意気だと銀行には相手にされなかったのですが、10年後に上場しました。現代の愚公のような人でした。愚公の行動を見ていた知旻は、愚公に向かって「酷いもんだお前の馬鹿さ加減も。老い先短い残り少ない力じゃ、山どころか何も崩せないだろう・・・・」と笑止千万と蔑視したのですが、愚公の心は変わる事がなかったのです。愚公の目標は「あの二つの山を崩して平らにする」という事でその志は変わる事がなかったのでした。「虚仮の一心」と言う言葉もありますが、粘り強く一歩一歩努力を続けることが大事である事を教えてくれています。このようにものごとを終始一貫やり続けることの意義を教えてくれる言葉はいろいろあります。 松下幸之助の言葉に「辛抱強く根気強く」という言葉があります。「一旦志を立てて事を始めたら、少しぐらい上手くいかないからといって投げ出したりしてはいけない。時に失敗して、志を挫かれる事があっても、気を取り戻してまた取り組みなさい、辛抱強く、根気良く努力を積み重ねいく。そうした時に始めて物事は成し遂げられる。成功とは成功するまで続ける事である」とある。 また倫理法人会の「万人幸福の栞」の中の「自信のないことは失敗する。練習すると言う事は、その仕事なり競技になれて間違いのないようにするのが、その形から見たところ、その実は信念をつけるのである。信念をねりかため、ねりあげるのである。きっと出来るぞ、きっとやるぞ、と動かぬ信念がその事を成就させる」とあります。 今日は時代スピードが速く、次から次と新しいビジネスが世に出てきます。また商品のライフサイクルも以前に比べると非常に短くなりましたし、新しい商品も洪水のように溢れ出てきます。消費者の生活スタイルもどんどん変わり、企業もそれに適応していかなければ生き残っていけません。景気が良いと言われていますが、相変わらず中小企業の倒産や廃業は多いのも現実です。確かに時代のテンポにあった経営をしなければなりませんが、何事にも「易」「不易」があります。時代の変化に合わせて仕事のやり方や既存事業の変革、新しい事業の創造などは、的確に時代を捉えて時代の潮流に乗りながらやらなければなりません。 このように時代の変化に適応しながら人、もの、金、情報を有効活用して事業の最適化を図っていく事がこれからの経営に求められます。しかし時代が変わろうが文明が進歩しようが仕事に取り組む姿勢や理念、企業としての倫理観や顧客に対する姿勢は変えてはならないのです。「愚公移山」で言われるように、ものごとの成就はテクノロジーの力や文明の力だけではなく、目標を明確にし、その目標に向かって辛抱強く根気良く取り組む姿勢や志がものごとを成し遂げる信念となり、ものごとを成就に導くのだと思うのです。愚公の壮大な志は正にこのことを教えてくれています。 |
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