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第46号テーマ: 期間損益計算と発生主義会計の歴史的考察
このレポートは、近代会計学の原則である期間損益計算と発生主義会計の特徴と意義を述べ、次に期間損益計算の成立を口別計算から期間損益計算へ移行する過程を歴史的視点で考察し述べる。後段では、発生主義会計の成立を現金主義から非現金主義へ移行する過程を、歴史的視点で考察して述べることにする。 ここで述べる期間損益計算とは、企業における利益計算の期間の事をいい、発生主義会計とは、企業の期間損益計算における収益・費用の認識の原則の事いう。 1,期間損益計算と発生主義会計の意義 近代会計の大きな特徴は、継続企業を前提とした期間損益計算と発生主義会計である。期間損益計算の意義は、企業の利益計算を、期間を区切って行う事によって継続的な経営活動の成果を正しく把握することを可能にしたことである。発生主義会計の意義は、企業活動における費用の認識に経済価値の減耗と、将来の権利及び義務を取り入れる事で、収益と費用を対応させ正しい利益計算を可能にしたことである。 現代企業は、営利を目的とした社団法人である、社団法人とは一定の目的をもった集団であって、企業は継続的に運営されることを前提としている。そのために企業活動の成果である「利益」の計算を正しくするために、期間を定め、その期簡の収益と費用を対応させたと考えられる。 期間損益計算と発生主義会計は、期間を区切って収益と費用を対応させる事で、損益計算を正しく測定する事を可能にした法則であると思うのである。 2、期間損益計算の成立 (1)口別計算とその歴史的背景 口別計算とは、中世ヨーロッパのイギリス東インド会社に見られるに、個別の貿易での「利益」の計算方法で、一航海毎、若しくは一販売口ごとに現金主義で収益と費用の清算を行い、利益計算をする事をいう。口別計算は、当座企業の利益計算で用いられた。(*当座企業とは、企業の設立から企業の終了を予定し、終了時に全て清算する企業形態をいう。)口別計算は、中世ヨーロッパの貿易産業によって発達したと考えられる。それは次の理由による。 15世紀末にヴァスコ・ダ・ガマよって発見されたインド航路によって、イギリスを初めとするヨーロッパ諸国はアジアに貿易を求めて進出して行った。15世紀から17世紀の中世ヨーロッパの、イギリス、オランダ、フランス等の商業は、主に胡椒や香料などの地中海貿易及び東方貿易が盛んに行われていた。この貿易で得た富は、一航海毎に及び一販売口毎に現金で清算されていた。その儲けの計算方法として口別計算は発達したと考えられる。 (2)口別計算の問題 口別計算は、一航海毎に商品売買による収入と支出、及び航海に要する要員の賃金、食料、燃料、航海に必要な備品付帯物等の購入支出を、取引の発生の都度、並びに航海終了時にすべて「現金」で清算された。その清算差額が利益として把握されていた。口別計算では、収支は全て現金で清算されるので現金主義会計と言える。口別計算は、当座企業において現金の収入と支出をもって利益の計算を行うという概念であり、残存物や売れ残った商品の資産的価値評価や資産の減耗評価はしないもであった。 口別計算は、一航海ごと、及び市場における販売口毎に現金の収支をもって行うため、収支の認識が単純であるといという点では明瞭な会計原則であったと言える。しかし、継続企業のような終了の予定しない企業の期間損益計算を必要とする企業には対応できなかったのである。 (3)口別計算から期間計算への移行 期間計算は、企業の利益計算を一定期間に区切って計算する方法を言い、この区切られた期間を会計期間という。この会計期間で利益計算を行う前提は、企業は継続するという原則のもとで成り立つと考える。 企業形態が、中世(15世紀〜17世紀末)の地中海貿易及び東方貿易の当座企業形態から、産業革命で近代工業の勃興期(17世紀後半から18世紀)のイギリスに見られる継続企業形態に変わる過程で、利益計算は一航海毎の計算から、会計期間に区切って計算をする期間計算を生じさせた。継続企業が期間を区切って利益計算をする事を、「期間損益計算」をという。期間計算は当座企業の口別計算からこの継続企業形態へ移行する過程から生じたと考と考えられる。 (4)期間計算の成立。 17世紀までの企業形態は地中海貿易・東方貿易が中心とする当座企業によって行われていた。しかし、この貿易量の増加が国家間及び企業同士の競争と抗争へと展開するようになった。企業家はこのような競争と抗争の激化から安定的な事業を求めるようになった。その事が一航海毎の当座企業から、拠点を設け継続的、永続的な事業を行う事を目的とする継続企業形態へと移行する事となる。 継続企業は、事業の設立は事業の終了を予定はしない事から、事業の拠点を定め、事業を営むための建物や機械設備等の生産手段を持つようになる。其の事から固定的資産の経済的減耗(減価償却)や資産(商品などの流動資産を含む資産を言う)の経済的価値を把握し、期間を定めて正しい利益計算する事が必要になった事から、期間損益計算が成立したと考えられる。当座企業から継続企業への企業形態の変化は、口別計算から期間計算を生じさせ、期間損益計算の成立は、企業の利益把握を継続的経営の実態に即した方法で把握する事を可能にしたのである。 3、発生主義会計の成立 (1)現金主義と非現金主義 現金主義は。損益を現金収支の事実を持って認識する会計の事をいい、非現金主義とは、現金主義から発生主義会計に移行する過程の、半発生主義会計及び発生主義会計をいう。今日の企業は、継続を前提とした継続企業形態で、損益計算は永続的な時間を人為的に区切った期間計算である。その期間計算は、企業会計の原則である費用収益対応の原則によって利益計算がされる。その費用収益対応の原則の基になっているのが非現金主義である。 現金主義は、現金の収入・支出と収益・費用とを同時点で把握し、現金収入を収益として処理し、現金支出を費用として処理して、その比較計算で損益計算を行うものであるため、現金の収支と費用、収益の認識が一致する事が必要である。非現金主義は、現金主義の利益計算に、将来収支計算及び固定資産の経済的減耗を反映させて利益計算を行う事で、より正しい利益計算をしようとするものである。 (2)現金主義の諸問題 現金主義では次のような問題がある。現金主義は、事業拠点や建物・機械設備をもって事業を行う場合は、固定資産取得のための支出が資産購入時点で全額費用となる事、また信用取引の将来収支計算が反映されない等があり、期間損益計算を適正に行う目的のためには妥当ではないのである。なぜなら固定資産は長期に渡って企業収益活動に貢献するのに対し、その費用は固定資産を購入した期間のみに発生し、その後の各期間には発生しなくなり、費用負担の平等性が阻害されるからである。 (3)現金主義及び非現金主義から発生主義会計への移行 非現金主義は、現金主義から発生主義会計までの移行過程で生じた、半発生主義会計の期間が含まれる。その特徴は現金主義による現金収支に将来取引による収入の権利及び支出の義務までを適用した損益計算であった。この半発生主義会計の段階では、今日の発生主義会計の重要な要素である固定資産の減価償却の考えが解決されていなかった。 (4)発生主義会計の成立 発生主義会計は、「全ての費用を及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割り当てられるように処理されなければならない。ただし未実現利益は原則として、当期の利益に計上してはならない。」との原則に基づいた損益計算の事をいう。発生主義会計では現金主義に欠落していた信用取引きの将来収支計算と、半発生主義会計になかった固定資産の資産原価を各期間に配分する方法としての原価償却の考えが取り入れられた。上記の発生主義会計は次の諸原則が含まれる。 (1)費用収益対応の原則。(2)収益の実現主義の原則。(3)費用・収益の測定の原則。(4)損益把握の発生主義原則。(5)損益計算書の完全性の原則。 4,結論 期間損益計算と発生主義会計は、17世紀末から18世紀初頭にかけて、それまでの当座企業から継続企業への企業形態の変化の過程で成立したと考えられる。期間損益と発生主義会計は近代会計学及び現代企業の利益計算の原則となっている。 この課題の主題である期間損益計算及び発生主義会計は、1494年にルカ・パチョリによって公刊された「ズムマ」の複式簿記を基礎として発達し今日に至っている。 ■参考文献 *新新・会計学 「著者 大友賛」(慶応義塾大学出版) *簿記の歴史「著者 上原孝吉」(一ツ橋出版) *ルカ・パチョリ簿記論「著者 片岡義男」(森山書書店) *近代会計制度の成立「著者 大友賛」(有斐閣) |
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