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第52号テーマ:「故事から学ぶ経営者の心得」
この巻頭言は,私が平成4年から7年にかけて当社のお客さまと知人・友人に宛に書いた「経営ワンポイントセミナー」から抜粋して掲載するものです。中国の古典や江戸時代の商道について書かれた書物から、心に響いた言葉を選び私なりの浅薄な考えを書かせて頂いたものです。よき書や言葉というものは千年以上たっても人の心を打つものですし、思想・行動の規範となるものだと思います。リーダーとして、また一人の人間としての心高やあるべき姿勢、心のあり様を知恵として教えてくれるものだと思います。 ■「流水の清濁はその源にあり」 定観政要より 「流水が澄んでいるか濁っているかは、源の良し悪しにかかっている。君子と人民の関係を河にたとえて云えば、君子は源であり人民は流水のようなものだ。 臣下は君子の行いを見ながら物事を行うものである。君子が誤った事をしておきながら、臣下にまっとうな事を期待するのは、濁の源をそのままにし、流水の澄むのを待つようなもの。どだい無理なことである。」 唐の太宗の言葉である。 流水の源とは、組織のトップの事である。経営組織は社長の方針、行動、言動などによって、左右されてくるものである。社長が公私を混同すると社員も公私を混同しがちであり、社長が会社の金銭にルーズであれば社員もルーズになる。 社員の公私混同を注意したり、仕事上の指導は、日頃からの社長の姿勢によって効き目があったりなかったりするものである。 社長の経営に対する情熱や公正なる姿勢は、社員の信頼を得るものであり活力ある組織となる。 ただ、「水清く魚棲まず」とも云います。また「清濁をあわせる」とも云います。 何時も聖人君子のような社長では社員は疲れますし、綺麗事だけでは危機に直面したときに対処はできない事も事実で在る。 濁を持ちながらそれは使わず、日頃からの清によって事にあたる事が大切なのである。 流水の清濁はその源にあり。 会社の盛衰は日頃からの社長の姿のなかに在ると言っても過言ではないと思います。 ■「わずかの得意なりとも粗略にすべからず」 分限玉の礎より 江戸商人は「商人は第一に小分の商いを大切にいたし候儀、肝要を存ぜられ候、わずかな商いにて、家内大勢相続の助力に候」 江戸商人は、得意先は一社に片寄る事無くすることが家内安泰と言われ、当時の商人の戒めとしていました。 確かに小口取引先は一件一件商い額も利益も小さく手間がかかります。 しかし、一件の取引先を止めても経営には何の影響もない。数件の取引が中止になっても経営が危機的になることはないのです。大口取引先は一件が中止になれば場合によっては経営の危機にすらなるのです。 大口取引先が良い取引先であり、これが会社に安定をもたらすと考えるのは経営者の習性でしょうか。 「わずかな得意なりとも、顔くせあしく、粗略に致すべからず。得意放れ、主人の誤りとなり不繁盛の根となる。深く謹むべきこと」と、小口得意先の大切さを教えてくれております。 小口取引先を多く持つ事が、家内(事業)安泰の鉄則であると自戒した江戸商人知恵を教訓にしたいものであります。 ■「事翌゚すれば則ち立ち、翌゚せざれば則ち廃す」 中庸より 事にあたって、準備の大切な事を説かれております。事にあたって成功するか失敗するかの分岐点は、種々の要件はあると思いますが、一番大切なのは助ェな準備にあると言う事です。 準備には、計画による準備、物質的な準備、精神的な準備とありますが、どれをとっても皆重要な事であり、準備の如何によって、事の成功失敗が決まると言っても過言ではないのです。 日本では昔から「段取り七割」と言われ、仕事が上手くいくかどうかは準備段階で七割が決まると言われています。 その準備について『中庸』は次の事を具体的に言っております。 一、発言をする前に、良く考えてから発言すると、つまずく事はない。 二、事をはじめる時は、事前に助ェな計画を立ててかかれば、苦しむ事はな い。 三、行動を起こす前に、充分な嵐閧?オっかり定めておけば、失敗する事は ない。 四、歩きだす前に、日程をしっかり定めておけば、途中でへばる事はない。 先般、あるセミナーで、良く仕事ができる人と、できない人の違いは段取の違いにあると言われておりました。段取りとは計画の事であり、準備の事であります。事前準備は、事の進行を事前に卵ェできますし、実施にあたって無駄をなくします。危機に遭遇した場合の回避の方法も翌゚嵐閧ナきるのです。また精神的にも助ェな心の備えもできるのですから、失敗は少なくなるのは当然といえます。 経営者は、事を始めるときは失敗は考えたくないものです。成功する事に熱い情熱を注ぐあまり、粗略な計画で細かい事は意気込みでカバーし助ェな計画を立てないで前進しがちです。これは経営者の習性でしょうか。今はこのような事はないのですが、数年前のバブルの時はそれでも一時の成功を収めた人はおりました。しかし今は、「夢破れて山河あり」とでも云いましょうか。 『彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず』の孫子の名言もあります。事前準備の大切な事は誰でも知っているのですが、いざ実行となると意外とむずかしいものです。心に銘じたいものです。 ■「大道は多岐を以て羊を亡う」 列子より この度のワンポイントは、「列子」の言葉の「大道は多岐なるを以て羊を亡う」を引用致します。 言葉の意味は「大きな道には分かれ道が多い。だから逃げた羊の姿を見失ってしまう」という意味で、人生も事業も目標や計画を持つ事の大切さを教えてくれております。 長い人生には多くの分かれ道があり、ややもすれば脇道に入りこんでしまい本道を忘れ大切な人生を無駄に過ごしたり棒に振ることがある。若い時には、人生に夢があり希望がある。この夢や希望をずっと持ち続けチャレンジすればいいのですが、年の経過とともに当初の夢も希望も薄れ年老いて人生を振り返ったら、何もせずただ日々に追われていたと云う人も多い。このような事を「多岐亡羊」という。だから人生には目標や計画があった方が良いのです。しっかりした目標こそが「大道」である。大道があっても多岐(魅惑)に流される事があるのですから、目標がなかったら自分の枝葉に執着する人生となる。列子はこれを言いたかったと言われております。 経営というエンドレスの仕事は経営者にとって、自己との戦いでもあります。いつも会社の維持、発展にチャレンジし続けるのが経営者である。 経営には三年後五年後の計画が必要であると言われます。三年後、五年後の自社の姿を描きそれに向かって事業計画を立て着実に進む事こそ経営の大道だと思います。事業における目標、計画は経営者の人生の目標であり計画であり、大海航路の羅針盤であります。この羅針盤を何度も確認、再確認しながら進む事が「大道を見失わない」最善の方法だと思います。 よく、目標も計画も大切な事はわかっている。立派な事業計画を立てても、それを達成する事がなかなか難しいし、なかなかできないという経営者の方がいますが、難しいから価値があるのであり、だからやったものが者だけが成功するのだと思う。 「小利を見れば則ち大事にならず。」とも言います。深秋の夜に人生の大事を考えさせられる最近の私です。 及川 秀悟 |
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