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第59号テーマ:民法について(1)
1、まえがき 民法は、個人主義を基本原則とした私法で、個人の「自由意志」が最も尊重されるものであるという立場で、個人は自由意志で誰とでも平等な契約行為をし、経済活動ができることを前提としている。民法は、財産法と身分法に分かれるが、特に財産法においては4つの原則がある。それは(1)私的自治の原則(契約自由の原則)、(2)所有権絶対の原則、(3)権利迫ヘ平等の原則、(4)過失責任の原則である。また、個人の自由意志の原則は、取引相手側に不利益を与える恐れがあるので、取引の安全と調和を図るために、民法第一条で、(1)公共の福祉の原則、(2)信義誠実の原則、(3)権利濫用の禁止の原則が設けている。 2、私的自治の原則 民法における「私的自治の原則」とは、個人の経済活動における法律関係は、強行規定(※当事者間の意思で法文の内容を変えられないもの。)に反しない限りにおいて、個人の自由意志と責任によって決定できるとするものである。私的自治の原則の意図するところは、個人の経済活動は個人の自由意志と責任において行うものであり、公権力の介入を好ましくないとする立場である。また、私的自治の原則が及ぶのは、個人が権利を取得し義務を負うのは、個人の意思による法律行為の場合だけであるとするものである。 民法は、個人の契約関係は、強行規定を最低ルールとし、それ以外は「私的自治の原則」によって決定する事を原則としている。ただ、当事者間で契約内容に決定していない事項などがあった場合には、当事者間の合意によって契約内容を決定する事ができる任意規定(※条文内容よりも当事者間の合意が優先する。)が適用されるということになる。 契約関係を私的自治の原則から考えると、「誰と」「いつ」「どのような内容のものを」「どのような方法で」「契約する」か、又は「契約しないか」を、個人の自由意志で決定し、その責任は当事者が負うとするものである。 3、契約の無効又は取り消しの対象となるのはどのような場合か。 まず、契約の無効とは、法律行為をしても法律効果が最初から生じないことをいう。法律行為が無効になる対象は、公序良俗に反する法律行為、意思無迫ヘ、意思の欠缺などの法律行為がある。 3-1公序良俗に反する行為とは、反社会的行為をいい麻薬の売買契約、賭博行為の契約、初めから他人を騙す事を目的に結んだ契約等をいう。公序良俗違反のような法律行為は絶対的に無効である。 3-2意思無迫ヘ、 意思迫ヘとは、「自己の法律行為の結果を理解できる程度の精神迫ヘ」をいう。法律行為が法的拘束を受けるのは自由意志に基づいて行った場合のみであるので、よって意思迫ヘのない者(意思無迫ヘ者)が行った法律行為は無効であるとするものである。(大判M38.5.11)。意思無迫ヘ者の精神年齢は、大体7歳〜10歳程度といわれるが、民法には意思無迫ヘ者の明確な基準がなく、裁判官に事案ごとに応じて結論をだしてもらうという考えに立っている。 3-3意思の欠缺 意思の欠缺は、「効果意思と侮ヲ行為が一致しない場合の法律関係」を規定したもので、心裡留保(93条)、虚偽侮ヲ(94条)、錯誤(95条)がある。心裡留保とは、侮ヲされた意思と効果意思は一致しないことを知りながら行う意思侮ヲの事で、冗談や嘘と知りながら行った法律行為をいう。通謀通謀示とは、相手側と通じてなした効果意思と侮ヲ意思が不一致である意思侮ヲを言う。錯誤による意思侮ヲとは、効果意思と侮ヲ意思との不一致を侮ヲ意思者が知らない事をいう。 契約の解除とは、契約が取り消されるまではその法律行為は有効であるが、その契約が取り消されるとその法律行為が無効になる場合をいう。契約解除には法定解除と約定解除とがあるが、解除権の発生原因が法定の事由の場合を法定解除といい、解除権の発生原因が「一定の場合に解除権が発生する」旨の契約で定めてある場合を約定解除という。 契約解除の対象は、債務不履行の場合と各契約類型の特則に場合があり、債務不履行には、履行遅滞、履行不煤A不完全履行がある。各契約類型の特則の対象は、個々の契約における特則によって発生する解除で、手付け解除や売主の瑕疵担保責任、売主の買戻しによる解除などである。個別の契約の特則条項によっての解除である。 |
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